ここに掲載する写真とその解説は、誰でも知っていることでもあるし、ちょっと考えれば解かることでもあります。しかし、ライダーの現実は「知っているだけ」で「やっていない」ことが多いのです。たとえば、バイクは常時点灯走行だけど、クルマでも雨や夕方には早めに点灯すべきと頭でわかっていても大半のドライバーはやっていません。ポイントはリスクの高いことに対して、具体的な改善策を常に意識して実践する習慣化にあります。少なくともここに取り上げた事例は実践したいものです。
交通事故の代表的な例といえば交差点での右直事故。こちらが直進で対向車が右折待ち、という状態で事故がよく起きています。
前を行くクルマが急に左折して巻き込まれる事故も多発しています。
交差点で直進する場合は、たとえ対向車が右折待ちをしていなくても速度を控え、前後のブレーキを終始用意した状態で通過。対向右折車のほかに歩行者や自転車などが飛び出してくる可能性があるからです。交差点での赤信号で停止する場合も、後続車が必ずしも停止するとは限りません。早めの減速で牽制しつつ、減速しながら左端で停止するのも安全率を上げる具体的な方法です。
日曜日・祝日など朝早い時間では、交差点の通過に要注意。走行ペースの速いトラックなどが信号無視することもあります。また、夕方や雨の日の無灯火走行のクルマを見落とさない。自転車の信号無視や夜間の無灯火走行、さらには携帯電話を見ながら走っている自転車や歩行者にも注意しましょう。交差点手前で速度を少しだけ落とせば、注意すべき情報量は圧倒的に増えつつ、落ち着いて制動準備ができるのです。
対向右折車からバイクは見えにくい。遠くにいてまだ大丈夫と思いやすい。バイクはくれぐれも速度を控えてブレーキの用意をして交差点を通過しましょう。
これでエンストしたら、さらに危険度がアップします。
左に寄らないでウインカーを急に点灯して左折するクルマに衝突しやすいです。バイクも左によってから左折しましょう。
交差点ではクルマの左後ろは要注意。タクシーの左後方は特に危険地帯です。
真ん中を走っていても信号が赤になったら後続車をブレーキランプ点灯で牽制しつつ、じわじわと左へ寄り、完全停止では左端がベストです。こうすれば玉突き衝突が起きても、自分の安全が確保しやすいです。
柏さんからの
ワンポイントアドバイス
最優先項目として、以下の3点を必ず実行して下さい。
常に交差点通過ではブレーキレバーに指を掛けて瞬時に入力できるようにします。
ブレーキランプが点いている状態で交差点通過するぐらいで丁度いいです。
足先が外に開いていると瞬時のブレーキ入力が遅れることで、さらに雑なブレーキ入力という結果を生み出します。
朝夕のラッシュなどでハイペースなバイクやクルマにつられていかないように要注意。早朝は信号無視が多いものです。速い車両が後ろに迫ってきたら、安全を確保しつつ先に行かせます。前後の車両とは車間距離を適切に保ち、急激なレーンチェンジなどにも注意し、前のクルマの先が見えるようにオフセットした位置を維持するなど、常に早め早めの情報入手にこだわります。
柏流語句の解説
自分の車線の中ならどこでも良いわけではなく、前後のクルマから見えやすい位置を常に考えた位置や走行ラインを指します。自分が見えやすく周囲からも見られやすい位置やラインを意味するため、急な動きをしないこともポイントとなります。
エンジンは始動直後にアクセルを吹かさない。エンジンの保護のためだけではなく、燃料の無駄になるし、アクセルを煽ってもエンジン温度の上昇は変わらないからです。住宅街などでは騒音を考えて、交通量の多いところまで押していくなど配慮も必要です。
寒い時期のタイヤは非常に滑りやすいのです。車体を垂直にしてアイドリング発進してから穏やかに加速し、ブレーキを穏やかに掛けます。何度か繰り返しつつ、徐々に加速とブレーキを強くします。こうして車体がピッチングすることでタイヤ内部の温度が早く上がり、前後サスのオイルも早く温まって、路面をきっちり捉えるようになります。エンジンの暖気だけでは十分ではなく、タイヤとサスの暖気をしながら徐々に走行ペースをアップすることを忘れずに。
新品タイヤも滑りやすいので要注意。車体垂直で穏やかに加減速を繰り返してタイヤを慣らします。最初から深いバンクはしません。交差点で急な曲がり方をせず、ゆっくりと回るぐらいの慎重さが必要です。
スロットルとブレーキによって前後のピッチングを繰り返すと運転する本人も自然に体が温まりやすくなります。また、真夏の炎天下ではエンジンの熱と道路やクルマからの熱で脱水状態・熱中症になりやすいので、早めの休憩が不可欠です。水分補給は大切ですが、水をがぶ飲みすると血中濃度が下がるだけなので、麦茶などミネラルを含んだものをおすすめします。
夏は路面のコールタールがグニョグニョになって非常に滑りやすくなっています。秋は濡れた落ち葉で滑りやすく、冬は路面凍結や融雪剤が非常に滑ります。日が当たるところはポカポカ陽気なのに、日陰はいきなりアイスバーンという状態もよくあります。春は雪解け水が流れ、融けた雪のあとが砂利混じりの路面になっていることが多いのです。台風など荒れた天気の後は大きな木が倒れていたり、非常に滑る濡れた葉っぱや木っ端が路上に散乱しています。海辺なら潮風による「しぶき」で前方視界が急に悪くなったり、路面に砂が浮いていたりします。常にオーバーペースにならないように、巨視的・微視的に見るだけではなく、季節や時間、曜日も含めて慎重な走りを心がけたいものです。
柏流語句の解説
巨視的とはマクロ的ともいう。数km先までの地形全体を読むこと。微視的とはミクロ的ともいうが、目の前の道路状況だけを読むこと。視点が低く一定にならないように、遠近をリズミカルに繰り返しながら先を読む、というのが理想。
市街地走行など慣れた道ほど、ライダーは油断しやすいものです。信号の切り替わりのタイミングを熟知していたり、交差点の曲がり角に滑りやすいマンホールのフタがある、などなど状況を知るほどに走行ペースを上げがちになるものです。「慣れ」による速さが、気持ちよい走りへと切り替わり、いつもとは異なる危険な状態になりやすいのです。用心深さの欠如が怖いのです。「慣れ」=「油断」となりやすいもの。道は生き物。常に変化し続けていると思ってください。そして貴方自身の変化、バイクの変化も「慣れ」で見落としやすいものなのです。だから冷静に時間の余裕を持って走り出すべきなのです。
乗用車のドライバーの方達にも、バイクの特性についてもっと知ってもらえれば事故が減ると思います。
クルマは、前後左右の視界がバイクよりも悪く、しかもバイクの俊敏な動きや、路面などによってふらつきやすいなどのバイクならではの特性を認識していないドライバーが多いことも関連しています。
どんなにテクニックがあっても防げない事故もありますが、バイクライダーは事故を起こさないよう、乗るたびに「事故を起こさないぞ!」という確認をとってから乗るべきと思います。
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赤信号の間に、車線をすり抜けて、一番前で停止する。
青信号に切り替わると、急発進、急加速するバイクが多いです。
特に朝の通勤時が多いです。
どうしたら良いでしょう。
朝の通勤ラッシュは、確かに人も車もバイクも自転車もすべて先を急いでいて怖さを感じます。
特に抜きつ抜かれつのデットヒートを繰り返すような走り方は危険。ひとつ間違えればとんでもない事故になってしまうと思います。いつもよりわずか5分早く出れば余裕の走りになると思います。
また、出発が遅れても慌てないこと。焦っても時間的には大差がないし、事故や違反でかえって時間とお金を浪費するだけですから。
400ccのネイキッドバイクなのですが、通勤時の市街地走行に慣れずギクシャクしてしまいます。
何km/hのスピードで安定して走る、とか安全に走るコツがあったらお教えください。
通勤時だけではなく、ギクシャクした走りで困っている訳ですから、発進・加速・減速・停止の直線練習をちゃんと繰り返して行うべきです。
エンストが怖い、停止時のふらつきが怖い。そんな方は講習会へ言行って基礎を学んで下さい。カーブをグリグリと攻める講習ではなく、まずは真っ直ぐのやるべき練習を徹底することをお奨めします。
免許取得は免許皆伝ではなく、通行許可証に過ぎないのですから。
路駐している車を上手にかわすにはどうしたらいいですか。
ギリギリまで行って急ハンドルで右に出てまた左側に戻る人がいますが、当然クラクションを鳴らされています。
路駐の車をかわす。これは簡単でもあるし、難しいともいえます。道幅や交通量の関係で簡単には答えられません。
速度を落とし、ブレーキの準備をしたまま適切なラインを選ぶのが基本です。路駐の車に運転手などが乗っている場合は急にドアが開くことが考えられます。タイヤが右に切っている場合は、発進したり、急にUターンを始める場合もあります。
質問では、後続車両がクラクションを鳴らしてしまう、と解釈しましたが、後続車から見て前のバイクが急に右側に出て来ると怖いためです。早めのウインカーで右へ寄るとか、早めにレーンチェンジする意思表示をするのが基本です。
急な操作はタイヤが滑ったりすることもあるし、周囲を驚かせるだけで、どんな状況でも良い結果は出ません。かならず先を早読みして、早めの意思表示。これがイチバン大切です。
タクシーは客を乗せなければ、乗車拒否と言われてしまうので、急停止、急ハンドル、急にドアが開く、が多く、後ろを走らないようにしています。
タクシーのドライバーは後ろのライダーを確認しているのか疑います。
ライダーが気をつけておくこと、乗り方などアドバイスください。
タクシーは、後続のバイクよりも手を上げて乗ろうとする乗客を優先する、と考えればいいでしょう。乗客の方が後続バイクより大切なんて思うタクシードライバーはいないはずです。
タクシードライバーも絶対にミスをしない訳ではないので、まずはタクシーの後方、特に斜め後ろにはいないことです。いつでもどこでも容赦なく急に左へ寄って止まる乗り物だと解釈して下さい。
たとえば、わざわざ滑り落ちそうな崖っぷちギリギリに行く人はいませんよね。電車を待つのにプラットホームのギリギリのところに立つ人はいませんよね。携帯電話を利用中の人は、残念ながら実際たくさんいて、事故が起きていますけれど。
危険性が高いところや危険のタイミングがどこにあるのか。運転技術以前の問題として、危険の正体を正しく認識するのが本当の交通安全のイロハなのですが、このトレーニングが非常に甘いのが日本の現状と思います。
つまり、プラットホームのギリギリに立って、電車は危ない!と怒るようなことなんです、タクシーの斜め後ろにいることは。
やってはいけないと解かっていても、渋滞していると「すり抜け」走行をやってしまいます。
渋滞のすり抜けはリスクが高いですね。
でも、時と場合によってはやらざるを得ないことがある、と個人的には思っています。
たとえば、渋滞30kmというすごく長いノロノロ運転の中、ずっと車の後ろについて走れますか。炎天下や土砂降りの雨でも可能ですか。バイクのエンジンからの熱もスゴイです。ツーリングで疲れ切った体で、それでも車の列に並びますか。ふらついて転倒してしまう危険性、あるいは渋滞による疲労で他の車両にぶつかる危険性もあるわけです。なので、注意を払いながらゆっくりと前へ進むことも視野に入れるべきです。
なお、渋滞末尾では決してそのまま止まらないように。早めの減速で後続車へハザードランプ点灯やブレーキランプの点滅で知らせることはもちろんですが、ゆめゆめ後続車が確実に止まってくれると思わないことです。後続車が止まってくれても、その後ろの車が止まる保証はないのですから。
高速道路やサーキットよりも、市街地は危険だと思います。
上下・前後・左右の状況を見ながら危険を予測することが安全につながると思うのですが、予測出来るようになるにはどうしたら良いですか。
また、周囲の状況を広範囲に安全にチェックしながら走行するための、上手い方法、訓練、なんてありますか。
経験と慣れ、しかないのでしょうか。
高速道路に限らず、自分の走りにモノサシがないと周囲の運転がどんなものか不明になります。何となくわかっていても正確にはわからない。
たとえば、直線路をビタッとまったくブレずに走れますか。速度ムラもなく走れますか。実は、周囲にクルマがいないことを前提に、そのようなオーダーを自分に出したことはないのが普通です。普通に走れていると思っているからです。
でも、実は速度ムラにラインムラは結構誰にもあるものなのです。では、それがどんな理由によるのか、考えたことがありますか。ほとんどの方は多少考えても深くは考えません。とりあえず前へ進めるし、適当に走っても楽しいからです。
周囲の状況を読むためには、まず自分がどんな運転をしてるのかが、わかることが安全快適の第一歩。少しでも速度ムラにラインムラがある時は集中力の低下、疲労や焦りの場合がほとんどです。
自分を分析できる能力が高いほど、周囲を見抜く能力は高まります。「経験と慣れ」はかえって勘違いの元になることもあります。