第4回
高速クルージングにトライ
パッセンジャーとのコミュニケーションの確認もできた、準備体操もできた、となればいよいよ高速道路を使ったツーリングに出発。しかし、ソロでの高速経験が豊富でもタンデムとなると話は別。風圧や進路変更といった重量増加の影響から、パッセンジャーへの気遣いまで、高速クルーズの注意点をまとめました。操縦感の違いにとまどわないようしっかりイメージトレーニングをしておきましょう。楽しいツーリングのための連載最終回。
出かける前にしっかりした計画を
- 日のあるうちに目的地に到着するように、時間には余裕を持って出発しましょう。
- 初心者は短めのルートを立てて、最初は無理せず休憩を多目に。1時間に1回休息を目安にしますが、高速での1時間は実際にはかなりハードに感じられるかもしれません。疲れを感じたら無理をせず休むようにしましょう。
- とくにパッセンジャーが慣れていない場合は、気持ちを先回りしてトイレ休憩も多めにとるようにしましょう。
- ライダーだけでなくパッセンジャーも絶えず緊張して力を入れているため、疲労度は激しく、腕などがパンパンに張ってきます。止まる回数やタイミングは、ライダーではなくパッセンジャーに合わせることが大切です。止まったらストレッチを忘れずに。
【これは平忠彦さんのオリジナルアイデアです。】
- 燃料タンクの上に布製ガムテープを貼り、細字の油性マジックでだいたいの予定表を書いておくと便利です。目的地、中継点、給油ポイント、休憩場所までの距離、連絡先など。ツーリングが2日間にわたる場合は、1日目の終わりに貼りかえます。
- 宿泊予定のホテルの電話番号なども書いておくと便利。
- 実際にかかった走行時間や消費ガソリン量を記録して予定と比較すれば、次の行動を修正することもできます。
タンデムならではのこと
- どうしても眠気におそわれたり、漫然運転になってしまうことはあるもの。しかし、タンデムツーリングなら二人で乗り切ることができます。パッセンジャーが肩を揉んであげたり、時には運転に支障を与えない範囲でわざとヘルメットをゴツンとぶつけてみましょう。眠気が覚めます。
- ソロよりガソリンの消費が多くなるので、給油はマメに。
- パッセンジャーもライダーの肩越しに前方をみた方が二人の一体感は生まれやすい。とはいうものの、無理に見るのはかえって危険です。
周囲との関係に注意
- 周囲の車からどう見えているかを意識することが大事です。前を走る自動車のルームミラーやバックミラーに自分が映る位置を走りましょう。
- トンネルを出たら思いのほか急カーブで、追い越し車線まではみ出てしまうこともあります。トンネル内は風景も変わり、雰囲気、スピード感のずれから錯覚をおこし、感覚も麻痺しやすいもの。メーターでスピードの確認する癖をつけましょう。
- 横風、乱流、巻き込みの影響。そんな状況を感じたら、瞬間にニーグリップ。トンネルの出口などでは、そうなる事を事前に想定して、構えておくことが重要です。
- 車線変更は余裕をもってしましょう。車間距離は十分に。
【これは平忠彦さんのワンポイントアドバイス。】
サービスエリアやパーキングエリアで駐車するときに、観光バスから離れた場所を選びます。降りてきた乗客の人たちが、大型バイクを珍しがって見に来ることがあるのですが、その時、高温になったマフラーにさわってやけどしたら大変ですから。
上のふたつのグラフは自動車安全運転センターが行った20組のライダー・パッセンジャーによる実験の結果をもとに作りました。上のグラフは、時速80km/hでブレーキをかけ停止するまでに要した距離を、下のグラフは時速100km/hでブレーキをかけ時速60km/hまで減速するのに要した距離の平均値を表しています。急減速も急制動も二人乗りの方が長くなっている、つまり重量が増えてブレーキの効きが悪くなっていることがわかります。これはどの排気量クラスでも同じことが言えます。同センターによると「実験前に運転者と同乗者が同乗方法について相談する機会を設けていた」ということなので、ライダーとパッセンジャーのコミュニケーションの重要性がこのような実験でも正しく認識されていることがわかります。
料金所にて
- 料金はパッセンジャーが払うのがスマート。前もって役割分担しておきましょう。
- 料金所ブースでオートバイを止めて左足を降ろしたら、ズッと滑ったことが何回もあります。4輪のオイルパンから漏れたオイルがたまっている可能性があるので気をつけてください。
- ETCレーンの自動車に注意。だいたい端にありますが、場面によってはETC車と一般車が交差するのでその流れに注意が必要です。
- 高速道路の進入路、出口、料金所では、特に目の動き(第2回準備運動を参照)をすばやく、一度二度でなく、何度となく確認しましょう。傍から見ると「落ち着きがない人だな」と思われるぐらいがちょうどいいのです。
- 合流時も早めの加速を心がけてください。
もしもの事故対策
- 言うまでもなく事故にはあわないのがベストですが、心構えだけはしておきましょう。
- 渋滞の末尾についたときは、後続車の追突を警戒。ポンピング・ブレーキでブレーキランプを点滅させたり、ハザードランプを点灯させたりして、後続車に注意をうながす。
- 高速道路やインターチェンジのカーブでの落下物。転倒につながる。
- 夜間の運転は周囲の景色がみえないせいでスピードの感覚がなくなりやすい。常にメーターで確認。
- もし転倒してしまったら、最初に自分とパッセンジャーの身体に異常がないかをチェック。
- オートバイが走行可能かどうかのチェックのために、まずガードレールの外など安全な場所に移動。
- 走行不能の場合はふだんメンテナンスを頼んでいるバイクショップに連絡して相談。旅先のショップを紹介してもらえる可能性もあります。
- レッカーサービスを行う会社もあります。出かける前に調べておきましょう。
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