新しい二輪車リサイクルシステムがスタート
リサイクルマークのない車両でも廃棄時無料引取

本ページは、一般社団法人日本自動車工業会が発行している月刊誌「Motorcycle Information」2011年10月号の記事を掲載しております。

2004年10月1日から、国内メーカーおよび輸入事業者による「二輪車リサイクルシステム」が運用されているが、当初の計画通り、7年が経過した今年10月1日からはリサイクルマークのない車両でも廃棄時にリサイクル料金を徴収しないという新しい形でスタートする。この間、課題の見直しや効率的な運用努力を行い、実現にこぎつけた。もともと二輪車の中古車は、その多くが輸出に回っているのが実情で、国内で廃棄されるものは数千台にとどまっている。そうした中でも、より廃棄・リサイクルしやすいシステムを目指して新しくスタートするものだ。

10月1日から、二輪車リサイクルでは、「リサイクルマーク」のない車両についての「廃棄時無料引取」がスタートする。
国内で廃棄される二輪車を適正処理し、再資源化するための仕組みとして2004年10月1日から「二輪車リサイクルシステム」がスタートしているが、これは国内メーカー4社と輸入事業者12社の計16社*(以下「参加事業者」という)による「自主取り組み」として始まったもの。スタート以降に参加事業者から国内販売される二輪車には「リサイクルマーク」を貼付して、リサイクル時の費用を無料化、しかしスタート以前に販売された二輪車を排出する場合には、参加事業者ごとに定めた「リサイクル料金」をユーザーなどの排出者から徴収するというものだ。
スタートから7年後の実施をめざし、参加事業者は社会的な周知徹底や、課題となる部分の見直しなどを実施、この仕組みの効率運用をめざした努力を継続してきており、今年10月1日から、計画通り「廃棄時無料引取」を行うことになった。
今後は、リサイクルマークのあるなしにかかわらず、参加事業者が国内販売した二輪車であれば、運賃などの実費は別にして、排出時にリサイクル料金を負担することなくリサイクルに回すことができる。いわば、二輪車の廃棄について、より環境にやさしいシステムとしてスタートすることになる。

※参加事業者16社:

本田技研工業(株)、ヤマハ発動機(株)、スズキ(株)、川崎重工業(株)、(株)成川商会、(株)MVアグスタ・ジャパン、ピアジオ・グループ・ジャパン(株)、(株)福田モーター商会、(株)イーケイエー、(株)プレストコーポレーション、(株)ブライト、ドゥカティジャパン(株)、ビー・エム・ダブリュー(株)、トライアンフ・ジャパン(株)、(株)エムズ商会、伊藤忠オートモービル(株)

二輪車のみの自主取り組みとしてスタート

廃棄物の量を減少させ、環境への負荷を可能なかぎり低減しようという目的のもと、2000年に「循環型社会形成推進基本法」が制定された。この法律は、国全体として、廃棄物の発生を抑制(Reduce)し、資源を循環利用(Reuse)し、そして廃棄物を資源として再利用(Recycle)しようという「3R」の考え方にもとづいたもの。その後、2002年には、「自動車リサイクル法」(使用済自動車の再資源化等に関する法律)が制定され、2005年1月1日までに完全施行されることになった。
こうした動きの中で、二輪車業界でも使用済み二輪車のリサイクルをどのように行うかについてのシステム構築が始まったが、もともと車両の廃棄について、二輪車と四輪車とでは大きな違いがあった。まず第一に、四輪車の廃棄処理・リサイクルを考えたときに、大きな課題となっていたのがエアバッグやエアコンに封入されているフロンの回収だが、こうした部品は二輪車には搭載されていない。四輪車には、国内で数千社ともいわれる解体専門の事業者があるが、二輪車は使用済み車両であっても輸出などで再使用される割合が高く、国内に解体を行う事業者が非常に少ない。さらに、登録制度が四輪車は陸運事務所での一元的な管理が行われているが、二輪車の場合は排気量によって、陸運事務所、軽自動車協会、市町村とばらばらであり、二輪車と四輪車とで共用できる車両登録制度がない。
自動車リサイクル法は、四輪自動車を前提としたものであったことから、その枠組みが、二輪車のリサイクルには非常になじみにくいものだった。そこで、参加事業者が共同で、独自の二輪車のリサイクルシステムを構築することになったものだ。

メーカーや輸入事業者が引き受け者としてシステムを構築

「二輪車リサイクルシステム」の大きな特徴は、「参加事業者自身が引き受け者となって行われる廃棄製品のリサイクル」ということ。そのために、次のような独自のリサイクルルートの構築が行われている。

1.全国190カ所の「指定引取場所」を確保

廃棄製品を回収するためには、各地に回収拠点を設置することが不可欠。そこで、参加事業者が契約する形で、全国に190カ所の「指定引取場所」を確保した。排出者は、ここに二輪車を持ち込むことでリサイクル処理を依頼することができる。

2.排出者が指定引取場所に持ち込めない場合の対応

個人ユーザーが排出する場合などのために、全国の二輪車販売店の中から「廃棄二輪車取扱店」を整備。取り扱い店に持ち込めば、リサイクルの申し込み手続きや指定引取場所までの運搬(実費の支払いが必要)を行う。

3.処理再資源化施設の確保

全国に14カ所の処理再資源化施設を契約して確保。ここでは廃棄二輪車を解体し、油脂類やバッテリー、プラスチック類等を取り除いた後、破砕処理を行い各種金属類や樹脂類に細かく分別し、再資源化を行っている。

二輪車リサイクルシステムの仕組み

メーカーや輸入事業者が引き受け者としてシステムを構築

今後予想されるリサイクル台数の増加

この二輪車リサイクルシステムは、メーカー、輸入事業者などからなる参加事業者が自ら行っているものだけに、対象車両は参加事業者が国内販売したものに限られている。現在、40社程度の二輪車輸入事業者が確認されているが、参加事業者16社で国内で流通する二輪車の95%程度を占めていると見られており、ほとんどの二輪車をカバーしている。
また、リサイクルでの引き取り対象となるのは、「ハンドル、車体、ガソリンタンク、エンジン、前後輪が一体となっている状態」のものに限られている。動く状態かどうかは問わないが、これらの主要部品が欠けていたり、部品だけというのは引き取り対象とはならないので注意が必要だ。
2004年10月1日のシステムスタート以来のリサイクル引き取り台数は、次のグラフのとおり。

二輪車リサイクル台数の推移

二輪車リサイクル台数の推移

最大が2006年度の約4,000台で、それ以降は減少傾向となっている。2010年の国内二輪車新車販売台数は、約42万台。毎年、新車の販売台数程度の使用済み二輪車は発生しているものと考えられるが、日本の二輪車の大きな特徴は輸出需要がきわめて高いこと。使用済み二輪車の大半は中古車および部品などでの輸出に回っているものと見られており、国内で最終的に廃棄・リサイクルされる二輪車は、このように数千台の単位となっている。
ただ、これまでのリサイクル実績は、ほとんどがシステムスタート以前の販売車両で有償のもの。リサイクルマーク付きのものは2010年実績で6%ほどだ。今年10月以降は、リサイクルマークのあるなしにかかわらずリサイクル料金の支払いは発生しないので、リサイクルの台数も増加することが予想される。

古いバイクでも、ぜひ相談に来店してほしい

廃棄二輪車取扱店のマーク

廃棄二輪車取扱店のマーク

佐藤善則さん

佐藤善則さん

東京都世田谷区の環状8号線沿いにある「ホンダドリーム世田谷」は、広くて清潔なロビーに新車、中古車を展示、常時、110~1,300ccの試乗車も準備して対応しているという大型の二輪車販売店。「廃棄二輪車取扱店」でもあることから、顧客からのリサイクルの相談にも応じている。

同店には、新車の下取りや買い取ってほしいといった形で、常時、ユーザーからバイクが持ち込まれる。ほとんどは下取りや有償で引き取って中古車として販売することになるが、中にはきわめて古い年式のものや、修理するのに中古車としての価値以上の費用がかかってしまうようなものもある。そうした場合には、リサイクルを勧めることになるが、それが多いときで月に4、5台くらいだとのこと。
「これまでは、お客様が自分の持っている車両を判断されて、『販売店に持ち込んでも買い取りは無理だな』と思われれば、街なかを回っている回収業者さんに引き取ってもらうといった例も多かったんだと思います。しかし、有価で取り引きできるかできないかは、本来、私どもが判断させていただく部分なので、ぜひ相談していただきたいと思います」と話すのは店長代理の佐藤善則さん。さらには、「販売店に持っていってもリサイクル費用がかかるということで持ち込むのをためらっていたお客様もおられると思いますが、これからは廃車済みの車両であれば、収集・運搬料金以外にはかからないので、より持ち込みやすくなると思います」と話す。

販売店にとっては、二輪車ユーザーの来店機会を増やすことが売り上げ増加の大きな力となる。いまは買い取りやリサイクルだけの顧客であっても、まずは来店してもらうことが必要。佐藤さんは、「動かないバイクの場合は引き取りにうかがうこともやっていますので、とにかく相談していただきたいと思っています」と話している。

年間6,000台程度の処理能力の施設

水口さん(右)と山本さん

水口さん(右)と山本さん

千葉県市原市にあるフェニックスメタル株式会社は、二輪車リサイクルシステムで中間処理を行っている再資源化施設の一つ。大型のシュレッダー装置を持ち、金属、プラスチック、ゴムなどが入り混じった状態の廃棄物を一括して破砕して分別することが可能だ。主力は自動車とエアコン、テレビ、冷蔵庫などの家電製品で、二輪車については年間600台ほどの処理をしている。
「自動車の場合は、解体業が別にあって、エアコン、エアバッグはもちろん、エンジン、内装、配線などが全部取り除かれてシャーシだけになった状態で入ってきますので、ただ破砕して分別するだけです。しかし、二輪車の場合は、完全に手作業で1台ずつの分解作業から始まりますので、自動車に比較するとずっと手間はかかります」と、同社社長の水口剛志さん。

分解して外装などを外す

分解して外装などを外す

同社に二輪車が入ってくると、ある程度の台数になるまで保管しておいて、週に1回などまとまった台数を処理している。まず外装のプラスチック類や、ガソリンタンクを外して、残っているガソリンを抜く。エンジンオイルやブレーキオイルなど、オイル類はすべて抜いていく。このようにして、50ccスクーターだと、1台を分解するのにかかる時間はおよそ20分程度だ。

大型破砕装置に投入する

大型破砕装置に投入する

破砕装置の内部

破砕装置の内部

鉄くずとして出てくる

鉄くずとして出てくる

そのような状態になった車体を、まとめて大型の破砕装置にかける。金属ばかりでなくプラスチックやゴムなども混じった状態だが、これが粉々に砕かれて、風力でのプラスチック選別、強力な電磁石での鉄の分別、さらには粒度選別や渦電流選別などの工程を経て、次第に金属の種類ごとに分別されていく。また、最後に残った非鉄類は、グループ会社に送られて、さらに分別される。最終的に、プラスチック、ゴムなどを燃やして得られる熱利用なども入れると、同社を含めた二輪車リサイクルの再資源化率は、2010年度で87.2%となっている。

同社では、二輪車のリサイクルは家電リサイクル部が担当している。同部課長の山本訓弘さんは、「当社では、処理能力そのものからいうと、二輪車で年間6,000台程度は処理できると思っています。10月1日から始まる無料引取で、おそらく持ち込まれる台数が増加すると思うので、いま、これまで以上に二輪車が入ってきたときに、どのような業務体制をとるかについて考えているところです」と話している。

リサイクル台数が増えたときにもしっかり対応

リサイクルマーク(見本)

リサイクルマーク(見本)

「本来、製品のリサイクルにかかわる費用は、もし全部が最終的に国内で廃棄される前提であれば、あらかじめ製品価格に織り込むことは、計算としては簡単だと思います。しかし、二輪車の場合は、大量の中古車が輸出されていることがわかっていましたので、国内で廃棄されるものは非常に少ないことがわかっていましたので、リサイクルマークがスタートするときも、4,000~6,000円という費用を1台1台に上乗せするわけにいきません。どのくらいの金額を価格に内部化すべきなのか、非常に悩みました」と話すのは、参加事業者の幹事役を務めている本田技研工業株式会社環境・リサイクル推進室の米山 淳さん。

そのために、リサイクルにかかわる費用を参加事業者16社で分担し、その費用を各社それぞれの方法で価格に織り込んでスタートしたのがリサイクルマークだった。しかし、スタート以前の車両については、その費用自体を価格に織り込んでいないので、リサイクルへの排出時に実費として料金を徴収するという、複雑な取り扱いになってしまった。
「二輪車リサイクルも7年を経過して、システムも安定的に運用できていますし、ようやくシステムスタート以前の車両についても、予定通り無料引取で対応できる体制ができました。今後はすべての車両について、排出時の取り扱いが同じになりますので、ユーザーの方々もリサイクルに出しやすくなると思っています」と米山さん。そして、「現状は、日本国内で使用済みとなった車両でも進展国の中古車需要が旺盛なため、国内で処理再資源化に回る台数は数千台に留まっています。しかしながら、今後もその状況が続くとは限りません。将来大量の二輪車を国内で廃棄処分しなければならない状況になっても、リサイクルシステムがしっかりしていれば、資源の再利用と言う形での社会貢献のみならず、不法投棄といった問題も発生しづらくなります。そういう観点でも、このシステムをしっかり維持していきたいと考えています」と話している。

本ページは、一般社団法人日本自動車工業会が発行している月刊誌「Motorcycle Information」2011年10月号の記事を掲載しております。

二輪車リサイクルの取組み経緯

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